さよせか第5回エピローグ春風

 年度も変わり、巴学園は新たな1年を迎えていた。

 廃校が決まっているため、新規入学生はいないが、妖精界が離れなかったため、廃校は取り消しの見通しとなり、近日、議会で存続が可決されることが決まっていた。

 朝、青梅市にある巴中学行きのバス停前で、シエーラとサナとミュウが立ち話をしている。

「コレ、春の新作オ菓子食ベル?」

「ありがとうございます」

「この味、少しイギリス人には辛いかも……」

「ニシテモ遅イナー」

 シエーラがとある方向をしきりに気にしている。

「寝坊したんでしょうか。LINEしてみましょうか?」

「モウ少シ待トウヨ」

 そこに、シエーラが気にしていた方向からセーラー服姿のドロシーが走って来た。

「遅イヨ! モウバス来ルヨ!」

「昨日、ずっとパパとママとトランプしていて寝るのが遅くなっちゃったの!」

「ショウガナイナー」

 丁度、バスが来て、他の巴中学生徒と共に、ドロシーは乗り込んだ。

 窓際から満面の笑みで手を振るドロシーを見送る。

 エレイナの力でドロシーの運命は修正されたが、両親は破産し、城などを売り払い、残ったのは僅かな財産だけだった。

 現在、ドロシーは青梅市にある巴中学の中学三年生となり、父は桧原村林業に携わり、母は産地直売所の職員として村内で暮らしている。

 かつての豊かさはなくなったが、家族と一緒にはいれるため、とても幸せそうだ。

 サナは運命を修正したとはいえ、払わされた代償の大きさを考えると、もし修正されない場合の代償の大きさに背筋が凍るような恐怖を感じた。

 一方のミュウにも運命の修正が入ったらしく、病気のためにやむなく留年をする羽目になったということになっていた。そのため、現在は巴高校三年生である。

 現在は学園の寮で暮らしながら、神明壮で得体の知れない通販事業のアルバイトをしている。

 ドロシーが乗ったバスが見えなくなると、三人は学校に向かって歩き出した。

 

 妖精界では女王の座を追われた後、王が決まらず難航をしていたがこれといって争いが起きているわけでもない。

 エルフを始め、妖精たちは自分の執着をする者にしか関心がないため、王になりたがらないというのが本当のところだった。

 官僚や政治家タイプの妖精ですら、王にならないほうが自分の好き勝手が出来ると王になるのを渋る始末だから、よほど普段、影で甘い汁を吸っているのだろう。

 そういう意味では現在、山の中にある城で軟禁に近い謹慎中のアンビーはうってつけの人材といえた。

 しかし、祭り好きというかトラブル好きも多い妖精界だから、次王争いの関心度は高い。

 巴学園三年となったユーフェリアも最有力と言われる王候補の一人である。

 教室で授業が始まる前に、

「全くいい迷惑よね」

「そうかな。君は好戦的じゃないし、無関心過ぎる嫌いはあるけれど、平和に治めることが出来ると思うよ? 王になればいいじゃないか」

 吉がどうしてならないの? と言いたげである。

「やあね。私が王の最有力と言われているのは、ゼフィラスと知り合いだからという理由よ。つまり、君のせいなのよ。ねえ、今すぐ友達めいた関係をやめましょう」

「そういうところ、君の悪いところだよ。ねえ、綺羅君」

 突然、話を振られた綺羅は困った調子で、

「無理になりたくないものになったってしょうがないだろう。それと、一方的に友達の縁を切るのは良くないぞ」

「君っていつも正しいことを言う」

「当たり前だろ」

 つまらなそうに話すユーフェリアに、綺羅は困惑を隠せない。

 アンジュが、

「でも、王が決まらなくても妖精界特に困ってないよね?」

「外交の方面ではあるみたいよ?」

 エルジュが困った笑顔で言った。

「謁見の時とかも困っているわ。諸侯から王になると名乗り出てくれれば一番良いんだけれど、妖精界の統治は面倒臭いからっていうのと、お母様が復活した時の報復が怖いからって誰もやりたがらないのよね。エルジュとアンジュがやってみたら?」

「うぇ。嫌だ。面倒くさそうだもん。それに、報復困るし」

「冗談キツイですよ。最終的には前女王アンビー様の娘ってことで、ユーフェリア様に収まるとは思いますけど」

「アンビー様が復活しても、吉がゼフィラス化すれば、アンビー様は終わりですから、ゼフィラスのお友達っていうだけでユーフェリア様はチート属性ですよ」

「僕、ドラえもんじゃないよ? 実際、妖精界全体を敵に回すのは厳しいけど、アンビー一人くらいならどうにか出来るけど……」

「いっそ、吉君を王にするのはどうかしら?」

「無理だよ。僕、仕えることがメインで作られたから王になるのは向いてないよ。それに、モデル業があるから……。しかも、今年は受験だしさ」

 そこに、キキに付きまとわれながら、エレンが教室に入って来て、授業開始となった。

 エレンのスーツはボロボロだったが、おおよそ神明壮の住人たちと何かあり、身ぎれいにする時間がなかったのだろう。

 

 放課後となった神明壮では巴学園を卒業した阿仙が掃除をし、同じく学園を卒業した凪子が後輩の描磨を連れて神明壮に来ていた。ウィンも勿論、付き合っている。

「私、思うんですけど、描磨さんの技術と妖精界の魔法技術を合わせたら、もっとすごいものを作れると思うんです! ぞくぞくしますね!」

「え? しませんけど……」

 描磨はとても困っている。

 ウィンが呆れたように、

「まあ、あんま気にすんな。凪子は妖精研究馬鹿だから」

 通り掛かった阿仙が、

「あまり汚さないでよ。ただでさえ、汚れてる家なんだから」

「お掃除妖精だから嬉しい限りだろ」

「いや、同じ家ばっかり掃除するのも飽きちゃうし」

 莉子はアルケミとボロとで新世界創造計画を仲良く作っている。現在はエレイナの魔力枯渇をどう早く回復させるかということを相談している。

 阿仙が迷惑そうに、

「もう、あんな迷惑なことはやめてほしいね」

「安心したまえ。もうアンビーの邪魔は入らんから、小生もあのような大規模災害を起こす必要はなくなった」

「安心ねー」

 莉子はニコニコしている。

 吉も莉子も戻ろうと思えば、すぐにゼフィラスやエレイナになれるだろうが今の所、人間の莉子と吉として生活をしている。

 

 エレイナの運命の力暴走終了後、妖精界辺りのゴチャゴチャに時々、巻き込まれながらもそれなりに楽しく送っている。

「日々是好日って奴かなー」

 阿仙は呟いた。

 

 

ご挨拶 - さよなら世界第5回

 

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